ナナイロのキセキ
しばらく視線をそらしていた坂下さんが、右手でメガネの位置を直すと、考えながら口を開く。
「ああ、ええと・・・。家まで送ろうか。なんか、心配だし。」
「えっ!!いえ!本当に、大丈夫です!!」
「いや、でも・・・。」
「本当に本当に大丈夫です!!・・・あの、それじゃ、失礼します!!」
「あ、牧野さ・・・。」
何かを言いかけていた坂下さんを振り切り、私は逃げるように改札口に飛び込む。
(これ以上一緒にいたら・・・。本当に心臓が壊れちゃう・・・!!)
そのままホームへと続く階段を駆け上がり、出発間際の電車に乗り込んだ。
息が苦しい。
空いている席に座り、呼吸を整える。
車窓からは、横浜の夜景が遠ざかっていく。
(ああ、もう、私、本当に・・・。)
坂下さんのことを、好きになってしまった。