ナナイロのキセキ
「ただいま・・・。」

火照った頭をかかえて、家に着いたのは22時すぎだった。

「おかえりー!・・・って、あら?デートだったの?」

台所から顔をのぞかせた母が、私を見るなり意味ありげな笑みをうかべる。

「えっ!?う、ううん、違うよっ!・・・なんで?」

「だって、なんかかわいい恰好してるし。メークもいつもよりきれいじゃない?」

「そ、そうかな・・・?いつもと変わらないよ。」


(と、いいつつ・・・。まあ、気合い入ってるんだけど・・・。うーん、お母さんって、こんなに鋭いひとだったっけ?)


「それに、なんか雰囲気がポーっとしてる。」

「へっ!?な、なあに?それ。」

「うーん、うまく言えないけどね、恋する乙女の顔よ!」

「こ、恋する・・・。」


(う・・・。どんな顔してるんだ、私!)


恥ずかしくなって、耳まで赤くなってしまったのを感じる。

それを見た母は、にまにましていた顔をさらににやつかせ、お玉を私に向けて言った。

「恋はね、しなくちゃダメよ!絶対きれいになるんだから。ナナ、いますっごくきれいだからね!

自信をもって大いに恋してちょうだい。」

「は、はあ・・・。」

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