ナナイロのキセキ
それだけいうと、母は台所に引っこんで、父の夕飯であろう料理の続きにとりかかる。


(お母さん、あんなこと言うんだ・・・。)


私は、普段と違う母の一面に、一瞬あっけにとられる。

けれど、きれいだと、言ってくれた。

勇気をもらったのも事実で、うれしい気持ちで自室に向かう。


(お母さんも、若いころはいろいろあったのかな・・・。)


そんなことを考えながら、ベットに寝転がり、スマホのメールボックスを開くと、
坂下さんからのメールが届いていた。


(・・・!!)


がっばっと起き上がると、スマホを握りしめ、文章を確認する。


「無事に家に着きましたか?お酒弱かったみたいなのに申し訳ない。」


それだけのメールだったけれど、心配してくれている坂下さんの気持ちは、十分伝わってくる。

私が最近、何度も感じる胸のドキドキ。

いま、それがまた始まっている。


(すごく、気にかけてくれてるんだよね。)


しばらく考えてから、スマホの画面に指を当てる。


「さっき家に着きました。お酒は、普段は弱くないんですけど・・・すみません。

いまはふらつかないし、元気です。

ごはんもおいしくて楽しかったです。ありがとうございました。」


書いたメールを何度も読み直し、何度か修正してなんとか納得すると、送信ボタンを押した。



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