ナナイロのキセキ
ほんとは、もっとちゃんとメイクも直したかったけど。

汗で滲んだ目元をふき取り、ささっとファンデーションを塗りなおしただけの、簡単な手直し。

髪の毛だって、束ねていたゴムをほどいて、手ぐしでざっと整えただけだ。


二回目のデートで、遅刻は避けたい。


そんな風に思って、これでもかってくらい急いでみたけれど・・・。


(遅刻した方がマシだったのかなあー。こんなに猛ダッシュしたら、髪も顔も乱れ放題だもん・・・!)


走りながら、ぼわぼわと空気を含んで膨らんでいく髪の毛を、必死で押さえる。

半泣き状態で走っていると、目の前に、待ち合わせの駅が見えてきた。


(はあ、はあ・・・。)


17:58.


(ギリギリかな・・・。もう、来てるかな。)


一度立ち止まってから、呼吸を整える。

気持ちと呼吸を落ち着かせてから、私は再び歩き出す。

すると、改札口の正面の大きな柱の前に、細身の長身の、黒い影が見えた。


(坂下さん・・・。)


この一週間、ずっと、ずっと会いたかったひと。

高鳴る胸を押さえ、もう一度大きく深呼吸をすると、小走りをして坂下さんの元に駆け寄った。


「こ、こんばんは・・・。遅くなって・・・、はあ、・・・ご、ごめんなさい・・・。」


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