ナナイロのキセキ
息を整えたつもりだったのに、最後の小走りがいけなかったのか、

思っていたよりも乱れた呼吸で声をかけてしまった。


(うわあ・・・!なんでこんなに息切らしてるんだろ。恥ずかしい・・・。)


両手で口を覆いながら、必死で呼吸を整えていると、ふわっと、頭の上に大きな手がのせられた。


(わっ・・・!)


ドキン、と、心臓が大きく音をたてる。

「大丈夫?そんなに急がなくてもよかったのに。・・・顔も真っ赤。」

やさしい口調で言いながら、坂下さんは私の顔を覗き込む。

声に応えるように、ちらりと顔を見上げると、思いっきり目が合ってしまった。


(・・・!!)


私はすぐに目をそらし、顔を下に向けてしまった。

胸のドキドキと呼吸の荒さで、ますます気持ちは落ち着かなくなる。


「・・・・・・。」

なにか話そうと思うのに、頭の中が混乱していて、なかなかうまく言葉が出ない。

「遅れるってメールくれてもいいし。オレはいくらでも待てるから。」

坂下さんは、私の頭をポンポンと軽くたたくと、少し困ったような笑顔でそう言った。

「はい・・・。」


< 38 / 261 >

この作品をシェア

pagetop