ナナイロのキセキ
駅までの帰り道。

やはり、少しだけ距離をとって、私は坂下さんの右隣を歩く。


(本当は、もっと、近づきたいのにな。)


きゅっと、切なくなるように胸が痛む。

行きがけに、勇気をだして少しだけ縮めた距離は、また、少しだけ自分から離してしまったように思う。

「・・・元気、ないかな?」

「え?」

そんな気持ちを察したのか、坂下さんは、視線を落としてそう告げると、心配そうな表情で私を見つめていた。

「い、いえ・・・。大丈夫です。ごめんなさい・・・。」

「いや、謝らなくてもいいんだけど・・・。その・・・

何か、気にかかることでもあったかなと思って。」

坂下さんは、考え込むように押し黙ってから、そのままゆっくりと足を止めた。

駅まで、あともう少し。

10歩も歩けば、構内の光が届きそうな場所だった。

「途中から、急に元気がなくなったように思ったんだけど・・・。

なにか、嫌な気持ちにさせるようなことがあったら、言ってほしいなと思って。」

「いえ!全然、そういうんじゃなくて・・・。」

「うん・・・。」

「私、私は・・・。」




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