ナナイロのキセキ
そんなに、長い時間ではないのかもしれない。

でも、ずっと待っていた言葉。

「はい・・・。よろしく、お願いします・・・。」

私は、絞り出すようにそう答える。

「・・・よかった。」

ほっとしたような声に顔を上げると、坂下さんは、私の左頬にやさしく触れた。

繋がってしまった目線を、そらすことができない。

「こちらこそ、よろしくね。」

そう言ってやさしく微笑むと、触れた頬とは反対の私の耳元に、やさしくキスをした。


(・・・!)


感じたことのないくらいの、大きくと跳ねた心臓の声。

その瞬間、右耳だけが、ぽおっと体温を上げていく。

目の前に、いままでとは違う関係の、坂下さんがいる。


通り過ぎる人たちの、視線を感じる。


それでも。


ドキドキとしながら震える足は、動かすことができなかった。



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