ナナイロのキセキ
時間が止まるように、心臓が止まった気がした。

頭の中が、真っ白になる。

時間が再び動き出すと、スローモーションのように意識が戻る。


(・・・ど、どうしよう・・・。)


唇に、ヒンヤリとした感触が続いている。

ドキドキと鳴る胸を、必死で抑える。

坂下さんはゆっくり唇を離すと、今度はふわりと私を抱きしめた。


(わ・・・!)


ドキドキが、加速する。

どうしたらいいのかわからずに、私はただ、そのぬくもりに包まれる。

「・・・あー、もうほんとに・・・かわいいなあ・・・。」

坂下さんはそう言うと、抱きしめる腕にギュッと力を込める。

その言葉が、いつもよりもさらに甘くて、やさしくて。

抑えきれないくらい、私の頬は熱くなる。


(坂下さん・・・。)


心の中で名前を呼ぶと、背中まで回された腕に、

少しだけ自分の手を添える。

心臓はドキドキとうるさいのに、なぜかとてもほっとする、心地のいいぬくもり。


どれくらいの時間がたったのか、坂下さんはゆっくりと腕の力を緩めると、

もう一度私に軽くキスをした。

「・・・そろそろ帰ろうか。送ってく。」


再び、私たちは川沿いの道を歩いていく。

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