ナナイロのキセキ
「はい。どうぞ。」

そう言って坂下さんはローテーブルに二人分のカップを置くと、

私の隣に腰を下ろした。


(・・・近い!ものすごく、近い!!)


こぶしひとつか、ふたつ分しかない私たちの距離。

ローテーブルの大きさを考えたら、このぐらいが妥当なのかもしれない。


(でも、やっぱり近い!!)


ここに来てから考えていた、これからの、私たちの関係。

私は一気に動揺が加速して、いままで以上に落ち着かなくなる。

「あっ・・・!テ、テレビでも見ていいですか?」

「うん。」

私はおもむろにリモコンを手に取ると、テレビの方向へとリモコンを向ける。


(・・・あ、あれ?)


テレビがつかず、さらに動揺してしまう。

「・・・リモコン、逆だけど。」

「え?・・・あっ!」

手元をみると、全ての文字が、私の方を向いている。


(・・・私ってば、なんてベタなことを!!)


思わず固まってしまった私の頭に、坂下さんの手がやさしくのせられる。

「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。何も、しないから。」

「え?」


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