ナナイロのキセキ
「12時前には送っていく。」

「え?ど、どうして・・・?」

予想外の坂下さんの言葉に、私は思わず聞き返す。

「こんな状態の牧野さんに、手を出したりはできないし。

でも、泊めたりしたらさすがに・・・何するかわからないし。

それにやっぱり・・・ご両親が心配する。」

「・・・・・・。」

黙って聞いている私の頭を撫でながら、坂下さんはさらに続ける。

「オレももちろん、牧野さんとずっと一緒にいたいと思ってる。

もちろん、子ども扱いしてるわけじゃない。

でも、ご両親にとっては、牧野さんはいつまでも子どもな訳だし。

急に外泊するなんて言ったら、やっぱり・・・心配すると思う。

特に、お父さんとか。」

「・・・・・・。」

言われて初めて、両親の顔が頭に浮かんだ。


(心配・・・させちゃうよね。)


お母さんはまだしも、お父さんは相当心配するかもしれない。

「・・・。」

「まあ、こんなこと言うのは、オジサンぽいかもしれないけど・・・。」

「・・・ううん。」

私は、目の前にある坂下さんの瞳を、まっすぐに、じっと見つめる。

「私はそういうこと・・・全然考えなかったから。」



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