ナナイロのキセキ
「い、いやっ!・・・ほんとにないよ・・・。

逆に、あり得な過ぎて聞いてて恥ずかしいな・・・。」

そう言って、後ろ髪を掻く坂下さん。


(私が一緒の職場だったら、絶対に憧れちゃいそうだけどなあ。)


私がじいっと見つめると、メガネの位置を直した坂下さんは、

言いにくそうに話題を変える。

「牧野さんこそ・・・増えたお客さんは、男が多いの?」

急に自分に話を振られ、私は一瞬きょとんとする。

「え?・・・うーん、そうですね・・・。

やっぱり、近くに勤めてる方が多いので、男の人が多いかなあ・・・。

OLさんももちろんいますけど。」

「ふーん・・・。」

不満げに返事をする坂下さん。

不機嫌な顔を見るのは、初めてかもしれない。


(もしかして、心配してる?ヤキモチかな?)


私の方が心配だ・・・って、言ってたもんね。

本当に、そんなことはあり得ないのだけれど。

彼女として・・・心配されるのは、くすぐったいようなうれしさがある。

「大丈夫ですよ。私こそモテない人生送ってきてますし!

そもそも、セラピストの指名は、みんな、上手いか下手か、

合うか合わないかでしか決めてないですよ。」






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