ナナイロのキセキ
楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまう。

最寄り駅まで歩いてきた私たちは、改札を通ると、

ここで、上りと下りで別れてしまう。

最終の新幹線に乗る予定の坂下さんは、

見送るという私の言葉に首を振る。

「明日も仕事なんだし、ここで大丈夫だよ。

新幹線の駅まで遠いし。見送りして帰ったら、終電もないだろうし。」

しばらくまた会えないのかと思うと、少しでも長く、一緒にいたくて。

でも。

疲れた身体で仕事をして、お客さんに迷惑をかけるわけにもいかない。


(今日会えただけでも、幸せだもんね。)


「・・・はい。」

「うん。いい子だな。」

やさしく私の髪を撫でる手が、そのまま頬に触れていく。

見つめる瞳が潤んだように甘くって、ドキドキとしてしまう。

「そうだ・・・。いつも言おうと思ってタイミングを逃してたんだけど。」

「はい?」

「名前・・・下の名前でよんでもいいかな。」

「・・・!」

突然の申し出に、驚きつつも、私はうれしくなってしまう。

「も、もちろんです!!みんな、ナナって呼んでます。」

「そっか。じゃあ・・・ナナ・・・。」

初めて下の名前で呼ばれ、恥ずかしさとうれしさが混じったような、

甘酸っぱい気持ちになる。







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