ナナイロのキセキ
「はい。」

「そしたら、オレも、下の名前で呼んでもらおうかな。」

「えっ!?」


(・・・て、それが自然な流れだよね・・・。)


「じゃ、じゃあ・・・。・・・亮一さん・・・。」


(うう、なんか恥ずかしい・・・。)


ずっと「坂下さん」だったのに、急に「亮一さん」になるのは、

呼ぶ方としてもなんとなく恥ずかしくなってしまう。

「うん。なんかうれしいな。」

恥ずかしくて、うつむきがちに言ったのに、

坂下さんは、それでも満足そうな顔をした。



見送るつもりが、「まだ時間があるから」と、

私の乗る下り電車が来るまで、

亮一さんはホームで一緒に待っていてくれるという。

「・・・なんか、すみません・・・。」

「いや。5分延びるだけだし。少しでも長く一緒にいれるのはうれしいし。」

「はい・・・。」

それは、もちろん私も同じ気持ちだけれど。

毎日忙しくて、今日も最終の新幹線で帰って明日も仕事なんて、

絶対に疲れてしまうのに。


(こんなにやさしくしてもらって、いいのかな・・・。)


握っている手に力を込め、亮一さんを見上げる。

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