私たち、政略結婚しています。
「そんな言い方はないんじゃないですか」
佐奈よりも先に、秋本が言った。
「はあ?俺の言い方のどこがおかしいんだよ。お前だって俺と佐奈が別れた方がいいんだろ。
俺たちが結婚してることもどうせ知ってるんだろ。
初めに決めてあったんだよ。会社の人間にばれたら離婚だって」
俺は彼を睨みながら一気に告げた。
声量が多少大きくなっていた。
ため息をついて、興奮しそうな気持ちを落ち着かせる。
「あなたが最初に他の人に話したんでしょうが」
秋本も段々と怒りの口調になってきている。
「何をだよ。
俺は…決めていたんだ。
こいつと本物になったらきちんとしようって。
結婚式も、周りへの報告も。
本物になったら……!
指輪だってもう本当は用意して…!」