私たち、政略結婚しています。

溢れだした気持ち

「佐奈っ」

突然、克哉が私に飛びつくように抱きついてきた。

「きゃ!何!」

私は訳が分からず驚いてよろめく。

克哉の匂いが私の身体を包んで、一瞬意識が遠のくような感覚になる。
ここにずっといられるような気持ちが沸き起こりそうになり、慌ててそれを否定する。

「離して」

彼の胸を押して身体を離そうとした。

「嫌だ。離さない」

克哉はさらに力を込めて私を抱き寄せる。

「やめて」

どうしたらよいか分からなくなり、泣きたい気持ちが襲ってきた。

「秋本に渡したくない」

「何で?どうしてよ!」

「ダメだ。お前を離したくない。どうしても、我慢できない」

「克哉!!」


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