私たち、政略結婚しています。
強引で、否応なしに入り込んでくる自分勝手なキス。克哉の気持ちをこんな部分から読み取ることに慣れてきている私。
言葉少なな彼の優しさをいつだって感じ取ってきた。
私は彼に抱き付いてそれを受け止める。更に求める。
もっと欲しい。
何もかもを忘れて、ずっとこうしていたい。
結婚した理由も、元カノの存在も、指輪のことも、全てがどうでもよくなるほどに克哉を感じたい。
その時、ふと彼の顔が私から離れた。
………え?
私が目を開くと克哉は困った顔で笑った。
「無理。ここ、往来だから。我慢出来なくなるだろ」
そんな照れた彼に見惚れる。
「…帰ろ。すぐ。…帰りたい」
私だって、我慢できない。