私たち、政略結婚しています。
「……お前なぁ…。マジ、勘弁しろって」
克哉は私の手をギュッと握ると引っ張り歩き出した。
そんな後ろ姿を見つめながら、いつの間にか克哉を信じている自分に気付く。
指輪の件も、きっと何か事情がある。克哉は私を裏切ったりはしない。
いつか別れる日まで、誠実でいてくれるはずだ。
今の私には、そんな克哉を信じることしか出来ないのだから。
離れなくてはいけない、限られた時間の中では。
「いやだ………。好き」
小さな小さな声で呟いた。
その背には届かない。
彼の未来が、中沢さんのものであっても、今の時間はわたしとこうしている。手を引いて歩いてくれる。
そんな些細なことが、堪らなく嬉しくて、切ない。