私たち、政略結婚しています。
お互いの未来が別々の方向を向いていても、今の二人が求めるものが同じならばそれでいい。
「克哉」
彼を呼び止めた。
克哉は足を止めて私を振り返った。
「私ね、この気持ちがこれからどうなっていくのかは分からないんだけど…」
「は?」
「今は、ただ、あんたに抱かれたいって思うの」
「な、何?何なんだよ、おま…」
彼の反論を聞かずに私は話し続ける。
「しばらく離れていたから…きっと克哉が足りないのね。このままじゃいけないって、あんたから離れようとした。いつか一人になったときに、耐えられないのは嫌だから」
「佐奈、何を…」
繋いだ手を、さらにきつく握る。
本当は、離したくなんかないのに。
「でも、我慢するのはやめるわ。欲しいときには欲しいって言う。私を見てほしい時は、余所見している首根っこを無理やりこっちに向けるわ」
「おい、さっきから言ってる意味が……」