私たち、政略結婚しています。
「そんなの、おかしいよ。政略結婚じゃないか。例え嫌でも浅尾も武雄さんも断れないよ」
他人事のように言う母につい大きな声を出してしまった。
…と、言うか、本当に他人事なのだが。
「ええ…、そうね…。でも、本当に武雄さんなら、優しいから…」
「絶対おかしいって。浅尾は絶対納得してなんかいねえよ」
「あら。…あんた…、佐奈さんと、まさか…?」
母がニヤニヤと微かに笑っている。
「ば…っ!何もねえよ!」
俺は立ち上がり自分の部屋へと逃げるように向かう。
部屋に入り、ドアを閉めた瞬間に考えた。
まさか浅尾が浅尾屋の娘で、家業のために軟派で有名な武雄さんと結婚するなんてな。
生意気で、うるさくて、いつも悪態をついてくる。そんな彼女の顔を思い浮かべる。
いつもつい、言い返してしまうけれど、苦手な女だけど…本当は彼女を嫌いなわけじゃない。自分でも分かっている。
本当は綺麗で勝気な彼女は……俺の好きなタイプのストライクなのだ。
どうにかなりたいだなんて思ったことはこれまでにはないけれど、複雑な思いが俺を支配していた。
…何故だ。
どうしてこんなにイライラするのか。
何だか急に浅尾が気になって…仕方がない。