私たち、政略結婚しています。
「佐奈と別れたらもう彼女を苦しめないのか」
もう、他に思いつかない。
方法がない。
元はといえば、自分が招いたことだ。
「ええ。もちろん。私とやり直してくれるのね?」
「…本当に佐奈には何もしないんだな?」
「あなたを返してもらえたら用はないわ。
あのストーカーね、次は何をしたらいいんだって張り切っていちいち私に聞いてくるの。私の親友があなたを好きだと言って、浅尾さんの写真を見せたらすっかりその気なの。あいつは同じアパートに住む噂のオタク男で…」
楽しそうに話す亜由美を見てゾッとした。
「もういいよ、あいつのことは。もう余計な指示はしないでくれ」
「じゃあ、克哉…」
パァッと彼女の顔が明るくなる。
俺も虫酸を堪えて笑った。
「佐奈とは……別れる。
もう、関係ないだろ?
他の話をしよう。俺達二人の、これからとか」