私たち、政略結婚しています。
急変
「ただいま」
時計が十二時を回った頃に克哉が部屋に入ってきた。
「おっそーい。信じられない。メールもスルーだし。どこに行ってたの?」
行き先も告げずに帰りが遅くなるなんて今回が初めてだった。
「ちょっと、昔のダチに会ってた」
私と目を合わせることもせずに彼はスーツを脱いでいる。
「……ふーん。そうなの」
その態度にフツフツと怒りが沸いてきてはいたが平静を保つ努力をする。
「昔の友達って?学生時代の?飲み会だったの?」
ついしつこく詮索してしまう。
「ああ。まあな」
多くを語ろうとしない克哉の様子が少し不安を呼ぶ。
いけないと思いつつもさらに追及してしまう。
「まぁな、じゃ分かんない。せっかくご飯作ったのに。食べずに待ってたんだよ」
克哉は面倒臭そうな顔で返事すらしない。
「ちょっと。無視しないでよ」
「…うるさい」
……は?
私の中に微かにあった理性の糸がブチンッと音を立ててキレたような感覚が走った。