私たち、政略結婚しています。
別々の道への入口
ぼんやりと天井を見ていた。
佐奈を深く傷付けた自覚はもちろんある。
今頃彼女は隣の部屋で声を殺して泣いているのだろう。
ソファから立ち上がりキッチンへと向かい、水を一気に喉へと流し込む。
普段は強気で、威張り散らしてはいるが、本当は泣き虫で傷付きやすい。そんな佐奈だから放ってはおけずに守りたくなる。だが、怒る顔も可愛くてつい意地悪をしてしまう。
佐奈の動きの一つ一つに毎日どんどん心を奪われて夢中になっていた。
ずっとこのままお前だけを見つめて暮らしていけると思っていた。
お前の気持ちさえ俺に向けば、二人の未来が重なると安易に思っていた。
亜由美が俺に対して執着するのは、単にプライドを傷付けられたから取り戻したいだけだろうが、今の彼女にそんな話をしても逆上するだけだろう。