私たち、政略結婚しています。
―――「おい。浅尾。お前…糸井さんと結婚するのか」
翌日。
俺はいても立ってもいられずに彼女にダイレクトに聞いていた。
「…は…」
彼女はパソコンを打つ手を止めて唖然としながら俺を見上げている。
「答えろ。もう決めたのか」
「…な!?何で…!」
彼女は口をわなわなと震わせる。
彼女の隣のデスクに腰掛け、俺は浅尾を真っ直ぐに見つめた。
「そんなこと…、何で伊藤が…」
「武雄さんを好きならいいんだ。…でも、もし違うなら…」
俺がそこまで言うと、彼女はガタッと立ち上がった。
「好きかどうかなんて分からないわ!会ったこともないんだから。
でも仕方ないでしょ!どうしようもないんだから!大体何で伊藤がそんな事を知っているのよ」
二人きりのオフィスに彼女の声が響き渡った。
昼休みで皆は出払っている。
「…ふふふっ。…あはははっ」
俺は彼女を見ながら笑った。
…何故だか…ホッとした気持ちになった。
浅尾は武雄さんを好きなわけじゃない。会ったことすらない。
そうだよな。
歳も離れているし、普通に考えれば分かることだ。
親子ほどの歳の差があるんだから。