私たち、政略結婚しています。
「…くそ…っ。何で、こんな…」
床を拳でドンッと叩く。
このまま佐奈が出て行ったら彼女は秋本の元に行くのだろうか。
他の男の腕の中で目覚めるのか。
まだ見ぬ佐奈の未来に勝手に嫉妬する。
俺が…俺が、ずっとお前を包んで幸せにするつもりだった。
今すぐ指輪をその細い指にはめて自分のものにしたい。
自分の不甲斐なさに泣けてくる。
「…きっついな…」
目を袖口に当てて呟く。
割り切ったはずだったのに。
現実にそれが形になってきた途端に心が悲鳴を上げる。