私たち、政略結婚しています。
――『私とやり直すなら、もう彼女に手出しはしないわ。
このまま別れないなら、私にだって考えがあるから』
じたばたしても仕様がない。
亜由美の目は狂気じみていて本気だった。
「ごめんな、…佐奈」
何も言えなくて。
夫婦でいる間、お前に気持ちを告げることすらしなかった。
俺の呟きに対してドアの向こうからは物音すらしない。
こんな風に終わりたくなかった。佐奈の拒絶が怖くて何もできなかったことを心から悔いる。
俺は携帯でメールを打ち始めた。
"亜由美。
明日、両親が訪ねてくるから家に来てくれ。
皆に君とのことを話そうと思う"