私たち、政略結婚しています。
もう、全部終わりにする。
佐奈を縛るのも、彼女に恋い焦がれるのも、もうやめる。
自分の手で遠ざけないと、繰り返し夢を見る。
佐奈が好きだから。
彼女のために俺ができること。
指輪の代わりに、別れた後の新しい人生をあげる。
このまま部屋のドアを一気に開いて、佐奈をきつく抱き締めてただ一言。
『愛してる』と言えたなら。
明日の二人はきっと笑っていられるのに。
涙を堪えながらできるはずのないそんなことを考えていた。