私たち、政略結婚しています。
コンコン。
その時、ドアをノックする音がした。
「佐奈。起きたか」
ドアの向こうから聞き慣れた声。
「うん…。どうしたの。入ったら?」
答えるとしばらくの沈黙の後、再び克哉が話す。
「いや、ここでいい。今日、母さん達が来るから。
これからのことを話そうと思ってる」
…これからのこと…。
私達が、…別れること。
浅尾屋の絡みもあるから話し合う…ということか。
「分かったわ」
「亜由美も呼んであるから。一応な」
「…うん」
返事をするのが精一杯。
鼻声に気付かれていないといいけど。
「俺、外で飯食って来るから。じゃ、それだけだから」
「あ、…うん」
しばらくしてから玄関のドアが閉まる音がした。