私たち、政略結婚しています。
「何をしてる」
その時、不意に聞こえた声に二人でそちらを見た。
そこには、克哉の驚いた顔があった。
「や、やだー、帰ったの?
これはね、浅尾さんが是非こうしたいって言って始めたの。私が止めるのも聞かないで」
中沢さんは焦って言い訳を始めた。
克哉は私を見て、眉をしかめ悲しげに顔を歪ませた。
「…立てよ。そんなこと…しなくていい」
「ごめんなさい…」
私は立ち上がると、寝室に向かった。
克哉の驚いた顔と、悲しげな顔が交互に目に浮かぶ。
私……何をしてきたの。
自分のことばかり。
悲しんだり苦しんだりしてきたのは私だけじゃない。
クローゼットからスーツケースを取り出すと、私は服を勢いよく詰め始めた。