私たち、政略結婚しています。
「……だった…」
思わず口からこぼれ落ちる。
「え?何?」
亜由美は怪訝そうに聞き返した。
「…ずっと、佐奈が好きだった。本気で、今も」
言った途端に頭に浮かぶ彼女と過ごした日々。
毎日が楽しくて、可愛くて、幸せだった。
意地っ張りな佐奈を振り向かせようと必死だった。佐奈が不意に見せる甘えが愛しかった。
「はぁ?!本当に好きだった?!今さら?あの子と別れることを承諾したじゃない。
まだ私じゃなくてあの子を?!
私のどこがあの子に負けてるのよ」
「勝ち負けじゃない。俺が勝手に、佐奈を求める」
痛いくらいに握り締めた手の拳が震える。
今更、手放してどうしようというのか。
佐奈を突き放して、本心を隠したまま亜由美と再婚でもするのか。