私たち、政略結婚しています。
「克哉!ダメよ。行かないで。
私はどうなるの?
死ぬわ!……死ぬわよ!
ここで、死ぬわよ!いいの?!」
俺の腰にすがり付いて亜由美が叫ぶ。
俺は振り返ると亜由美の髪をそっと撫でた。
「亜由美にも、幸せになってもらいたい。
こんな恋愛はしない方がいい。
綺麗なのにもったいないよ」
亜由美はポカンとした顔で俺を見上げていたが、やがてうるうると瞳が涙で滲みだした。
俺はそっと彼女の手を自分の身体から離すと、再び佐奈のいる部屋へと向かった。