私たち、政略結婚しています。
「信じ…られない」
唇を微かに震わせて佐奈は呟く。
「信じろ。もう不安にさせない」
俺も座り込んで佐奈の目線に顔を近付けた。
「…私を……好きなの?」
「……ああ」
やっと、言える。
佐奈にずっと言いたかった。
「お前だけだ。お前を……愛してる」
佐奈は両手で口を押さえて目を見開く。
大きな瞳が、涙と雨で濡れている。
……綺麗だと心から思う。
「……嘘…」
「嘘じゃない」
「だって、だって…。私たちの結婚に愛はなくて…、やがて終わるって克哉はいつも言って……」
「誰が終わらせるかよ」
そのまま彼女の手を掴んでそっと顔から離すと、引き込まれるように口づける。
柔らかな唇を舌でなぞると艶めかしく揺れて俺の気持ちを掻き立てる。
「佐奈………好きだ…」
そっと閉じられた佐奈の目から透明の涙が煌めきながら次々と溢れ出す。