私たち、政略結婚しています。
ずっとずっとこうしたかった。
愛を囁きながらこの腕に彼女を包み込み、愛に溺れさせてお前を溶かしてしまいたいと、ずっと考えていた。
「……指輪は……ないけど」
俺はポケットからキーリングを取り出すと佐奈の左手の薬指にそっとはめた。
佐奈の指にはまったぶかぶかのリングの先に鍵が揺れる。
「……ふふっ。何よこれ……」
佐奈は笑顔を見せると俺の首にその細腕を回して精一杯俺を抱きしめた。
「…イカしてるだろ。なかなかいないよ?鍵のついた指輪で告白された人なんて。
その鍵で毎日部屋に帰って来い。どこにも行くな」
俺は彼女をそのまま抱きかかえて立ち上がった。
小さな子供のように俺に抱かれた佐奈を見上げて目を合わせる。彼女の両足が俺の腰を挟み込み巻き付いて絡みつく。
「……少し痩せすぎよ。腰が折れそうよ」
「お前もな。子供みたいに軽い。
色気に欠ける」
「そんな子供みたいで色気のない私が好きなくせに」
「…そうだよ。悪いかよ」