私たち、政略結婚しています。
Ⅵ・ずっと二人で

重なる思いと狂気



「克哉、佐奈さん!あなたたち何してるのよ!ずぶ濡れじゃないの」

その時、通りかかった車から声をかけられ私は克哉に抱き上げられたままの体勢で振り返った。


「母さん」
克哉が答える。
「もう、何してるの。風邪を引くでしょ」

すると後部座席の窓がすっと下りて、そこから私の両親も顔を出した。

「佐奈、はしたない。下りなさいっ」

「……あ…」

私は裸足で彼に身体を巻き付けている。一瞬、二人で目を見合わせ唖然とする。

その直後に何故だか可笑しくなり、二人で笑いだした。

「ふ……ふふふっ」

「あはははっ」

そんな私達を四人の両親たちは呆れたように見ている。

「もう!若い人って分からないわ」

「ほんとにね。どうしてこんな雨の中を。ねぇ」

母親たちの会話が聞こえて益々笑える。

「ふふふっ。克哉、下りるわ。お母さん達に怪しまれてる」

そう言いながら地上に下りようと身体をよじったら彼が更に強く私を抱き直した。

「ダメ。ようやく捕まえたんだ」

「ちょっと…!下ろしてよ」

「じっとしてろよ。このまま家まで帰るぞ」

「え?冗談でしょ?」



そんな私達にお義母さんがため息まじりに言う。

「先に行ってるわよ。早く戻りなさい」



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