私たち、政略結婚しています。
「あははは!!全て燃えてしまえばいいの!あの子のものなんか!
ついでにあの子もいなくなればいいわ!
そしたら克哉は助かるの!!私のところに帰って来られるわ!私の着けた火が全てを燃やすわ!もっと燃えろ!」
中沢さんはふらついた足取りで叫び、歩きながらよろめく。明らかに彼女は正気を失っていた。
「あぶな…!」
転びそうな彼女の方へと駆け寄ろうとした私の腕を克哉は掴んだ。
彼を振り返ると、克哉は緩く首を横に振った。
その直後に警官が中沢さんを取り押さえる。
「放火の現行犯で逮捕する」
パトカーに乗り込んで行く彼女を私達は互いの両親と共に黙ったままで見ていた。
「焼けた部屋は寝室の一部です。しばらく署員らが調査のために出入りしますがよろしいですか」
「はい、お願いします」
克哉は毅然と答えている。
私はその隣でふらりと身体が揺れてそのまま地面に膝をついた。
「佐奈!大丈夫か!」
「私…びっくりして……」
答えながら意識が遠のいていく。手足が震えて、身体が冷たくなっていく。
「佐奈!」
克哉が私を呼ぶ声が頭に響く。
やがて、それも聞こえなくなり私はそのまま気を失った。