私たち、政略結婚しています。
甘い嫉妬
――「全く。ヒヤヒヤさせんなよ。本当にお前は俺に迷惑をかけるのが好きな奴だな」
うっすらと目を覚ました私の視界に入ってきたのは克哉の呆れたような笑顔。
私はぼんやりと彼を見つめた。
「おい。生きてるか?」
私の顔を間近で覗く彼に両手を伸ばして抱きついた。
「うわ。何だよ」
ギュッと抱きしめて頬と頬をくっつける。
こうして私の側にいてくれる。
彼女のところには行かなかった。
分かっていたけどやっぱり嬉しい。
「…お前。身体弱いよな、ちょっと雨に打たれたくらいで。気は強いのに」
ぶつぶつ言いながらも、その手は私を抱きしめ返してくれる。
克哉は分かっていない。私は強くなんかない。たったこれだけのことで泣けそうになるから。