私たち、政略結婚しています。
「あ、中沢さんは……」
ふと思い出して顔を上げた。
克哉は悲しげに緩く笑いながら言う。
「あいつにもいつか分かるよ。本当に好きな奴が現れたときに俺達の気持ちがさ」
きっと彼女も必死で恋していただけ。
間違いであると気付く前に絶ち切られてしまった思い。
「少し……分かるわ。踏み外してしまっていたけど」
私が言うと克哉はギョッとした顔をした。
「お前、あんなにされて何言ってんだよ。少しは懲りろよな。結婚指輪も盗られたんだそ?」
「私には……分かるから」
「信じられね。イイ人ぶるなよ」
同じ人を好きになった。この笑顔が、何にかえても欲しかった。
きっと彼女も同じ。
「克哉が……悪いのよ」
「はあ?何でだよ」
あまりにも魅力的だから。
悔しいけれど。
「何ででもよ!…私にだって分からないわ」
どうしてこんなに惹かれてしまうのか。
流れる髪に触れたくなる。
笑いかけられると力が抜けて見てしまう。
抱きしめられると目眩がする。
きっと、ただ、好きだから。