私たち、政略結婚しています。
「佐奈……、俺、もう駄目。我慢できない」
我慢しないで。このまま抱いて。
言葉の代わりに舌を絡める。高ぶる感情に行動が追い付かない。もどかしい。夢中でお互いの身体をまさぐる。
「克…哉っ…」
その時。
「きゃっ!何してるの!」
私達は慌ててパッと離れた。
お義母さんが驚いてこちらを見ている。
「玄関先で!何してるのよ!部屋に戻りなさい!」
お義母さんに背中を押されて部屋に押し込められる。
「もう!佐奈さんはもう少し休みなさい!
克哉も!無理させないの!」
バタン!!
呆然と二人で顔を見合わせる。
「……ぶっ」
同時に吹き出した。
「あはははっ。母さんに見られるとは。参った」
「もう。明日からどんな顔したらいいのよ」
笑いながら克哉が大きな温かい手で私の頭を撫でる。
「お陰で萎えたわ」
「バカッ…」
「あ。残念、とか思ってるだろ」
「もう!ホントにやめてよね!」
「仕方ないからしばらく一緒に寝てやるよ」
布団に入って私を呼ぶ彼に向かってダイブして飛び付く。
「うわ!!危ねぇ!ビビった……」
克哉の胸に顔を付けて全身を巻き付ける。
ギューッとしがみつく。
幸せ。
ずっとずっと、このままいたい。
夢うつつに克哉の声がした。
………「苦しいって……。アナコンダかよ…。殺されるぅ……」
その声は聞こえないふりをして、そのまま克哉の胸の音を聞いていた。
嫉妬も時には甘いスパイスになる。秋本くんには後でこっそりメールしよう。
そう思いながら、この温かさにいつしか眠っていた。