私たち、政略結婚しています。
話しながら次第に近付いてくる顔に動揺して私は驚きながらただ、彼を見返していた。
ただならぬ空気の私たちを周りで見ているのは、もはや留美子ちゃん一人ではなかった。
現場にいた十数人が集まってきて、みな唖然としている。
「何とか言えって」
言えるかー!!離れてよ!!
私が目でそう訴えていると克哉がチッと小さく舌打ちをした。
「マジでムカつく」
そう呟いて今度は私の手を引っ張り歩き出した。
「か、克哉!皆が見て……」
「関係ねぇ」
「だってバレて……」
ずんずんと歩いてスタジオの外へと出る。
その時、中から皆の騒ぐ声が遠くから聞こえた。
「きゃー!!何今の!!」
「マジでぇ?!嘘ー!!」
「うわぁ、驚いたな」
……バレてる。
そうよね、皆の前でこんな風にしたりしたら。
今まで固くなにただの同僚でしかないと隠してきたのに。
それを望んだのは克哉の方なのに。
何故今さら?
私は訳が分からないまま克哉に手を引かれて歩いていた。