私たち、政略結婚しています。


「では、並んでこちらにお立ち下さい。途中からは自由にして下さって構いませんよ。自然な表情の方がいいものができますから」

「はい」


ぎこちなく俺の腕に手を絡ませてくる佐奈を見下ろす。

今までにあった色々なことを乗り越えて、なおこうして側にいてくれる美しい花嫁。
結婚してからおよそ一年。
佐奈は俺を責めることも、なじることもせずに俺についてきた。


「はい、いきますよー」

カシャッ。

そんな俺たちが初めてこの軌跡を写真に残す今の瞬間。
佐奈にどうしても言いたいことがあった。


「……佐奈」

「ん?」

彼女は笑顔を崩さすに口だけで返事をした。

――「ありがとう」

「え?」

彼女は俺を見た。

俺も佐奈を見つめる。


クリクリとした目が、不思議そうに動く。
それを見て自然と笑みがこぼれる。


「いてくれて、良かった。
俺に愛想を尽かしていなくならなくて、良かった」


「……やだ、何よ急に」



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