私たち、政略結婚しています。
「伊藤さん。お疲れ様でした~。素晴らしかったですぅ」
留美子ちゃんが猫なで声で言う。
「光村さん、聞いてた?君の出した白を基調に展開する案を話してみたんだけどよかったかな?」
克哉は笑顔で彼女に聞いた。
「はいっ。もちろん!嬉しいですっ」
私は彼女を横目で見た。
頬を赤らめて克哉を見つめるその顔を見ていると何だかムカムカとしてくる。
調子いいんだから。
克哉の話なんて一つも聞いてはいなかったじゃないの。
「浅尾。光村さんを見習えよ。後輩のほうが熱心だなんて示しがつかないだろ。ペラペラとお喋りする時間じゃねぇだろうが」
言われて私は克哉を睨んだ。
何で全部私が悪くなるのよ…!
「はいはい、すみませんねっ」
言い訳するのも面倒くさい。
私はふて腐れたまま二人から目を逸らした。
「…やきもち…」
克哉がぼそっと呟いた。
彼の方を見るといつものバカにした顔でニヤニヤと笑っている。
…な!何よ!!
信じられない!きっとお喋りしていたのが留美子ちゃんだと分かっていて私をからかっているんだわ。
フンッ!とばかりに前を向く。
…どうせ、その程度なのよね。私はからかって面白いだけの存在。
時々私を抱くのも、義務感と性処理だけ。
分かっているんだから、あんたが考えていることくらい、全部。
どうせ、私を好きではないんでしょ?
いつかいなくなるつもりなんでしょ?
…聞けないけれど。