私たち、政略結婚しています。


「ちょっと!どういうことよ」

私は訳が分からないまま、戻ってきた彼に手を引かれて隣の部屋へと押し込まれた。

「克哉!」

「静かにしてろよ」

バタン!

私の鼻先でドアは閉められた。

な!何なのよ、一体!

私の怒りが静かに満ちている間に、部屋から話し声が聞こえてきた。



「亜由美、どうしたんだよ、こんな時間に」

「話があって。この時間ならあなたが帰っているかと思って」

「突然来るなよ。明日も仕事なんだから」

「すぐに帰るわよ。…あら。ご飯だったの?」

「ああ。もう…君とは話すことなんてないよ。このまま帰ってくれないか」

「以前よりもずいぶん冷たくなったのね」


私は二人の会話を聞きながら気付いてしまった。

――中沢さんと克哉は…、きっと付き合っていたんだ。躊躇いもなく部屋に上がりこんでくることからもそれは読み取れた。
何より、二人の会話に漂う空気がその親密さを物語っていた。



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