私たち、政略結婚しています。


「私…やっぱりあなたを、忘れられないの。どうしても…克哉が必要なのよ」

彼女の悲痛な声が私の胸に刺さり、ドクッと痛む。

「亜由美…。ごめん、無理だ」

中沢さんの申し出を瞬時に拒絶する克哉の声。

私の心は張り裂けそうになる。

もしかして二人は、…私のせいで…?

考えれば考えるほどに、当てはまっているような気がしてならない。

どうしよう。私はどうしたらいいの?
自分の存在が、二人を引き裂き苦しめているとしたなら…。


「…分かったわ。…ごめんなさい、突然」

「亜由美…。すまない」

「…ふふっ。いいの。優しくしないで。こんなときに…残酷だわ。もっと忘れられなくなるわ」

「ごめんな」


部屋のドアが閉まる音がして、人の気配が消える。

私はずるずるとドアに寄りかかって滑り落ち、座り込んだ。

身体中の気力が抜けていくような感覚だった。



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