私たち、政略結婚しています。
「…それで…?どこに行くつもりなんだ?」
冷たく静かに響く声が私の耳に届く。
「…どこでも。ここ以外の場所よ」
涙を拭って荷造りを再開しながら答えた。
「俺の話も聞かないでか?」
「必要ないわ。分かったもの」
中沢さんと、克哉が…お互いを必要としていることは。
私が邪魔をしていることも。
「何をだよ」
「彼女と幸せになって。私、本当にあんたには感謝してるの。迷惑かけたくないのよ」
嘘だ。
他の人と幸せになって欲しいわけじゃないくせに。
私があんたと幸せになりたかった。
「いい加減にしろよ」
「あんたもね!もう同情はたくさん!」
そう言いながら鞄のチャックを閉めて立ち上がった。