私たち、政略結婚しています。
哀しい刻印
彼女の目は、こう言っているような気がする。
『克哉が好き。中沢さんを見ないで』
…都合が良すぎるだろうか。
自分がそうあって欲しいと思うだけの錯覚だろうか。
佐奈が断れないような状況から始まった関係。
半ば強引に結婚したことを後悔しているわけじゃない。
あの時は、どんなことをしてでも彼女を欲しいと思った。
武雄さんにとられることが、どうしようもなく悔しく思えた。
一緒に暮らし始めて、ますます佐奈のことを愛しく思うようになった。
ストーカーに殴りかかったときは、そいつを殺してやりたいと本気で思った。
…何も伝わっていなかったのか。
…本気の…アホだな。
思いながら彼女の唇を貪る。
佐奈も俺にしがみついている。
まるで自分を離さないでほしいとでも言うように。