私たち、政略結婚しています。
どこにも行くな。
俺を好きになれ。
間違いではなかったと、思ってくれ。
離したくない。
だけどこれで本当にいいのか。
佐奈にとって幸せなのか。
俺はとんでもない間違いを犯しているのか。
不安と疑問が頭の中を交錯して俺から冷静さを奪う。
きっといつまでもこのままではいられないのだろう。
俺たちの未来は別のところにあるのだろう。
今だけなのかもしれない。
考えて、胸が苦しくなる。
「…克哉…!痛…い」
気付けば彼女の首筋に歯を立てていた。
「…あ…」
俺はそれを慌てて離し、佐奈を見つめた。
濡れた目が不安げに俺を見つめ返している。
「…悪い…」
それだけ言って彼女の身体を離す。