私たち、政略結婚しています。
たったその程度のことで。亜由美が訪ねて来ただけで…俺に言い訳すらさせないでこの結婚を終わらせることができるお前の気持ち。
愛ではない。
実家のための、…犠牲なのか。
「行けよ」
もう、やめてしまいたい。俺もお前と同じように楽になって忘れられたなら。
「…あの…」
動かない佐奈の肩を軽く押した。
「行けって。もういいから。
お前の望む通り…亜由美を呼んでやるよ。
だとしたらお前は邪魔だ」
「…っ…!」
そうなってほしいんだろ。
亜由美が俺とよりを戻すのだと思いたいんだろ。
佐奈は寝室へと駆け出すと、荷物を持って戻ってきた。
俺は俯いたまま黙っていた。
言葉を口にするのをためらうかのように佐奈は俺の方を見ている。
何も言うな。
初めから終わる運命だった。
きっかけが早く訪れただけのことだ。
お前の気持ちが俺に向かない限り、この苦しさからはどうせ逃げられない。
それが今だっただけだ。