私たち、政略結婚しています。
チーン。
エレベーターが到着して二人で乗り込む。
小さな密室で二人、黙り込んでいる。
あれから中沢さんを呼んでどうなったのだろうか。
私とはどうするつもりなんだろう。離婚届とか、もう用意したのかな。
何かを話したいのに、思いつく内容はどれも聞きたくないことばかり。
二人で暮らしていたときは、些細なケンカや笑いで会話が途絶えたことなどなかったのに。
まるで話したことすらない他人のようだ。
「…今…、大丈夫なのか」
「え?」
突然克哉が言う。
「その…実家にいるのか?」
「あ…うん」
返事をするだけで精一杯だ。
「ストーカーは?」
「あ、…大丈夫。見かけないわ」
「そうか。よかった」
「…うん」
天井を見上げる。
涙が零れ落ちないように。