私たち、政略結婚しています。
泣き顔を隠すことすら忘れて顔をくしゃくしゃに歪ませていく。
「…ふ…っ、ふははは。…本当に不細工だな。もっと可愛く泣けねぇのかよ」
克哉は笑いながら私の顔にハンカチをゴシゴシ当てる。
「けっ…化粧が…っ。剥げるー…。やめてー…」
「大丈夫だ。剥げても顔はそんなに変わらない。あははは」
私の顔を拭く克哉の胸にしがみつく。
…ここに帰りたかった。
「甘えん坊。やっぱりほんとにバカだ」
長い腕が私を包む。
「もうしばらく俺の嫁をやってろ。逃げだす時期がまだ早い。諦めろ。やがて終わるときが来るさ」
…逃げ出したいのはあんたの方でしょ、と思ったが、口には出さなかった。
もう少し、側にいたいから。