私たち、政略結婚しています。

佐奈はいつものようにギリギリと悔しがる。

俺はニヤニヤと笑いながらそんな佐奈の様子を見て嬉しくなる。

「…ドキドキは…ちょっと…したけど。でも!もう、なんとも思ってないからね!」

…不意打ち。
赤い顔で、そんなことを言う佐奈を愛しく思う。

なあ。
俺を好きになれよ。
このままどこにも行くなよ。

言えないけどな。

「単純。お前はそのうち、どっかの男に騙されるな」

「騙されないわよ。あんたみたいな奴にでも出会わない限りはねっ」

言い合いながら再び二人で餃子を包みはじめる。

騙されないよ。
俺が、離さない限りはな。

こうして笑って楽しく過ごせる時間が、終わらない限りは。

< 48 / 217 >

この作品をシェア

pagetop