私たち、政略結婚しています。
と、同時に後ろから私を追っていたストーカーがキユッと足を止めた。
「佐奈!大丈夫か!?
お前、何でそんな必死で走ってんだよ!危ねぇな!」
私の半身を起こしながら彼が言う。
その顔は青ざめ、心配しているのがその表情から瞬時に読み取れた。
「…克…」
私が彼の名を呼ぼうとした瞬間、彼の目線は背後にいた男へと向けられた。
「…何だ?…お前…」
男に対し呟くように言いながら彼の手が私の身体から離れ、立ち上がる。
「…あ…」
ストーカー男はそんな克哉を見ながらうろたえた様子で後ずさった。
「お前…まさか…佐奈の後を…」
彼は言いながら男にジリジリと近づいていく。
私は道路に座ったままの体勢でそんな二人の様子を見ていた。怖くて声を出すことも出来ない。
「お前のせいなのか…?最近佐奈の様子がおかしいような気がしたのは…!ずっとこうしてつきまとっていたのか…?」
そう言った次の瞬間。
彼は急に男に駆け寄り拳を振り上げた。
「ちょ…!!克……!」
私が止めようとする隙もなく、
――彼は男をドカッと殴りつけた。
「克哉!!何するの!」
私は驚いて立ち上がった。
…足の怪我のことも忘れて。